これはある平凡な、特段実績を引き下げている訳ではないジャッジが、世界最高峰の舞台でのジャッジングに挑んだ物語ーー
【目次】
自己紹介
- UBです。
- Madrid WUDCに参加した時点では2年生です。
- めちゃくちゃディベート/ジャッジが上手いという訳ではありません。少なくとも巷で呼ばれるような「オーソリ」には分類されないタイプの人間です。
- ディベーター:1年生の時にオープン大会でのブレイク経験は複数あります…が、2年生になってからは受賞経験がほぼありません。練習してなさすぎた説はあります。
- ジャッジ:オープン大会でのブレイク経験、1年生大会でのブレイク・受賞経験は複数あります。国際大会はブレイクしていません(NEADCは0.1点差でブレイク落ちしました…)。
- Madrid WUDCは普通にブレイク落ちしています。
お勧めしたい方
- 海外大会でのジャッジに挑戦してみたいが、躊躇しているという方
- WUDCに興味があるという方(ディベーター・ジャッジ参加を問わず)
- UBが書くつまらない文章にアレルギー反応が出ない方
注意事項
- ジャッジが凄い上手いとかそういう訳ではないので、技術的な解説とかができる訳ではありません。
- 何かしら学んだことはPart.2で共有したいと思います。
- 論題に関する解説はよしパンくんのブログがお勧めです!
- ディベーター記はUTDS Blogの以下の記事をお勧めします!(今回のワールズ、日本のインステから出場していたのはUTDSだけなんですよね…)
本編
〈Part.1-A〉なぜジャッジ?
ジャッジをすることに対するモチベーションは様々あるかと思います。
- ディベーターとして上達するためにも、試合を俯瞰できるようになりたい
- ジャッジが楽しい
- ジャッジとして表彰されることを目指したい
- ジャッジをすることを通じて自分のインステなど、コミュニティーへ貢献したい
僕がジャッジするモチベーションも色々ありますが、一番は「コミュニティーへの貢献」という点が大きいです。1年生の頃は(ある意味当たり前ではありますが)ひたすらにディベーターとして練習や大会に参加しており、特に大学内の練習でジャッジがよく不足しているのを目にしていました。これまでの恩返しという意味でも、ジャッジが出来るようになりたいと思っていました。
また、「ディベーターに疲れたから」というネガティブな理由もあります(笑)。1年生の10月下旬からの3か月間で6個ほどの大会に出場しており、結果が伴わないこともあってやや燃え尽き気味になっていました。その気分転換としてジャッジしていたという側面は少なからずあるかと思います。(気分転換したいなら離れればいいのでは?というマジレスは控えてください、僕が傷つきます())
〈Part.1-B〉なぜWUDCのジャッジ?
Madrid WUDCでのジャッジを考え始めたのは4~5月頃だったかと思います。ただ、自分が積極的に何か賞を狙いたいというよりかは、「ヨーロッパ観光をしたい」、そして「同期の活躍する姿を一番近くで見たい」「あと出来るなら速報したい」という気持ちの方が大きかったです。この時点ではBPのジャッジ経験はあまりなかったので…
特にTokyo B (Rina & Yuichi) の2人にはいつも刺激を受けており、また良き友として応援できることがあればしたいという思いもありました。対面のWUDCの提供ジャッジ(提供ジャッジ数はN=n-1)はなかなか見つからないだろうということもあったので、2人の活躍に少しでも貢献したいという思いがありました。
晴れて6月あたり?にTokyoの提供ジャッジをすることになりました。
〈Part.1-C〉それまでのジャッジ経験(~2022年8月)
- Aoyama Women's Cup 2021 (12.12)
去年は開催されていませんが、Judge Trainee制度が設けられている大会ということでほぼBPジャッジの経験がない中でジャッジをしました。錚々たるメンバーの方と一緒にジャッジをすることができ、とても勉強になりました。
- Silver Cup 2022 (2.19)
R1(ディスカッション)、R2(OA)とそれなりに上手くいったかと思いましたが、R3で全てをやらかしました…。一定のパフォーマンスを保つことが1つの課題だと認識しました。
- KK-Cup 2022 (2.26-27)
上述のようにディベーターモチベがあまりなかったこともあり、志願して提供ジャッジをしていました。Silver Cupと比較すればジャッジしやすい試合も多く良い練習になりましたが、一方でunderdevelopedなissueが多いとそれもそれで大変だな…ということを実感した試合もいくつかありました。
- The Kansai 2022 (3.19-20)
UTのチームの提供を断ってWADのチームの提供をしていました()。Asianの大会ではありますが、頭の使い方という面では良い練習になりました。R4はこれまでで一番レベルの高い試合(かつバブル)を単チェということで、入ることが分かった時はさすがに恐ろしかったです…。Rookie SFをRyoseiと2人でチェア出来たのはいい思い出です(もうだいぶ実力差はついてしまいましたが…)。
- 1年生NA大会
2年生になり、Seikei Joint、K-Cupなどもジャッジしました。Seikei Jointのモーション解説はそれなりに頑張って書いたので、どれくらいの人に読まれているのか気になるところですね…
- その他
インステ内での練習などでもちょくちょくジャッジをしていましたが、時期的にNA・Asianが多かったです。
〈Part.1-D〉海外大会ジャッジへ
<課題>
海外でジャッジするにあたって、個人的に課題と捉えていた点は主に以下の2つです。
①海外ディベーターの英語を聞き取ること
日本のディベーターの英語ばかりに慣れてしまっていたため、海外のディベーターが話している内容を正確に聞き取ること(特に、アクセント・速度などが日本で話されているものと異なる場合)はどうしても難しかったです。
解決策としては、音源を聞く、ディベーターとして出場してみるなどもあり得ますが、結局ジャッジの練習をするためには、同じくらいの緊張感を持ってその場に入り込む(=ジャッジとして大会に出場する)ことが一番手っ取り早いかなと思っています。音源を聞くことは(僕が最も怠っていた部分ですが)もちろん練習になると思いますが、いざとなれば巻き戻せてしまいますし、ディベーターとして出場している時は他のディベーターの話をジャッジほど集中して聞けてはいないと思います。
②英語でのOA・ディスカッション
どちらかというと個人的にはこちらの方が大変でした…(Silver Cupで英語でOAしてる1年生を見て大尊敬していました)。
これまで長らく日本語でのディスカッション・OAしかしていなかったということもあるのかもしれませんが、個人的には順位を決めるに至るプロセスを日本語で言語化する習慣がついていました。こちらの方がより正確に思考できると個人的には考えているのですが(これを英語に変えることを面倒くさがっているだけという説もありますが)、問題はこの思考をどう出力するかについてです。
試合中のメモも一部日本語、OAを考える際に書くメモも一部日本語という状態だったので、これをディスカッション・OAの際にどう英語に出力していくかが課題でした。結局慣れるしかないということで、回数を重ねることで上達を目指しました。
国際大会でのジャッジを意識し始めた頃(9月頃)からは、インステ内でも練習での英語でのOAを練習していました…が、1年生が多い時などは結局日本語の方がアドバイスとかもしやすかったので、日本語でしていました。完全に英語でOAを行った回数はそこまで多くないかもしれませんね…。
<実際>
- 海外大会でのジャッジ
海外大会でのジャッジ怖い、OAしたくない…というのは誰しもが思うところではあると思いますが、大会を選べば安心して良い体験ができるのでは?と思っています。
良さそうな例としては以下のようなものです。
- BP大会
- Asian形式と比較して1部屋あたりのジャッジ数が多くなる傾向があるので、基本的に実績が無いジャッジであればパネル・トレイニーに回されがちです。提供ジャッジ制を敷いているとより人数が集まる保証が生まれます…が、人数と質がトレードオフになるという説もあります(後ろで詳述しますが、その最たる例がNEADCでした…)。
- Pre-WUDCなどの大会はレベルが高くなります。
- Pre-UADCなど、UADC形式を想定した大会
- パネルを含めた全員がOAをするので、強制的にOAの練習をすることができます。また、(もちろん適当にやってはいけませんが)提供ジャッジ制かつ複数人ジャッジの場合が多いので、責任を抱え込む必要がない場合が多いです。
(僕はあまり分かっていないのですが)CAに入っている人が有名かなどによっても集まる人は変わってきますので、身近にいれば海外大会に詳しい人に聞いてみるのが一番だとは思います。
ただどの大会でも、海外大会で実績を積んでいない限りはいきなりチェアにアロケされる確率はそれほど高くないように思います。
(もうご存知かもしれませんが、以下は海外大会の一覧が載っているスプシです)
- 海外大会一般について
これはよく言われることですが、数時間単位の遅延が発生することも珍しくありません。会議室などを取って参加する場合は特に注意が必要です。また、タイムテーブルを見てどの程度の余裕が取られているかも確認した方が良いかと思います。
また、最近は対面への回帰が進んでおり、オンラインの海外大会が減少しつつあります。
<ジャッジ記>
- 3rd Daulat Ram College Parliamentary Debate Pre-UADC 2022 (9.9-11)
OAの練習をしようと思い、自らを追い込むことを決意したのです…が、大会前日に開催がキャンセルされました。大いに謎。
- 14th IIT Bombay Debate 2022 (10.29-30)
[提供ジャッジ制(N=n-1)、1部屋ジャッジ2~3名]
初めての海外大会ジャッジでした。
R1はかなりレベルの高いところに入れられていて(Champion/4th Breaking Team、6th Breaking Team、Rookie Championがいました)、分からずに混乱していた部分も多かったですが、チェア(Youngwoo Park)がいい人(かつイケメン)だったので助かりました。
その後はR2は1~2点、R3は1点部屋だったので、徐々に慣れていけたような気がします。R4は7点部屋でぎょっとしましたが、思いのほかクリアだったのでそれほど揉めることなく終わりました。COのBeatrice Cuizon (Ateneo) がめっちゃ上手かった(普段はよくジャッジをされている方ですね)。
最後の試合で人生2回目くらいの英語OAをしましたが、入れられた試合のレベル感(4点部屋)的になんとかなった…と信じています。でもブレイク落ちしたのでなんとかなってなかったのかも。
これは国内大会ではあまりないので一応補足しますが、予選が5試合の場合、R4OAなし(サイレント)→R5OAありのパターンが比較的多いような印象です。この時僕は「R5どうせサイレントだしチェアでも耐えるやろ!」と思っていたら後でサイレントではないことを知り悲しみに暮れていました。
- IDS NEADC 2022 (11.12-13,19)
[提供ジャッジ制(N=n-1)、1部屋ジャッジ3~4名]
北東アジアを対象とした大きな大会(Regional Majors)ということで、緊張していましたが…。
R1でいきなりWADのチームをジャッジすることになるという偶然もありましたが(別にcorruptionという訳ではないですが、パネルを説得してOG>OOにしてもらいました(笑))、ジャッジする試合のレベル感的にはIIT Bombayよりは低いものが多く、また自分でジャッジディスカッションを主導するような場面も多かったため、なんだか思っていたのと違うな、というのが正直な印象でした。ディスカッションをした感じだと、中にはディベートをはじめたてという人もジャッジの中にいたようでした。
R2は0点部屋、R3は1点部屋でしたが、R4は6点部屋でした。チェアの方(詳しくは存じ上げていないのですが、有名な方ですよね)と順位が一致していたので安心していましたが、その後のディスカッションで貢献できていたのかはあんまり覚えてないです…。トレイニーの方を説得するのに時間を使った記憶があります。
R5、R6はいずれも3点部屋かつサイレントだったので、チェアでしたがそこまで大変ではありませんでした(が、R5でチームがなかなか来ないというトラブルがありかなり神経を使いました…)。R6のディスカッションは上手くまとめられた自身もあったのですが、結局ブレイク落ちしていました。後で0.1点差でブレイク出来ていないと分かった時は、悔しいという思いもありつつ、まあしょうがないなという諦めもありました。
ただ点数的には7→7.75→7→7→7.05→7.5だったので、特定のラウンドでミスをしたというよりかは、全体的な改善の方が課題でした。とはいえR5でそれまでずっとチェアをされていた方がパネルに来られて、そこでその方中心で話が進んでいってしまったのは力不足を認識しました。
(余談ですが、詳細な点数まで開示される海外大会は珍しいような気がします)
- Structural Reasons Pre-WUDC (12.10-11)
[提供ジャッジなし(N=0)、1部屋ジャッジ1~2名]
秋T(11.26-27)、紅葉(12.3-4)と国内でジャッジ、翌週のTokyo Mini(12.17-18)でTDをすることが決まっていたため、WUDC前最後の海外大会として参加しました。UTC+0かつ自宅からの参加だったため、R3~4は辞退しました。
R1にTejas、R2にTed Chang & ShauryaがいるなどPre-WUDCが何たるかを感じさせられる大会でした。R1、R2とチェアと順位が一致していたため、それほど揉めませんでしたが、そうなると話すべき内容が少なく、かえって難しい感はあります…。R2ではチェアの方に何チームかの比較を行うよう指示され比較しましたが、後からチェアの方から別の見解を聞き、「たしかに、しくった…」となることもありました。
R1のアロケを見た段階で単チェの部屋がかなり多く、自分が巻き込まれることへの恐怖感があったものの、R2までは無事でした。ただR5は単チェ&OAを喰らうことになりました。2~3点部屋ということでそれなりに分かりやすい試合ではあったものの、前に出ていたNEADCと比較すればそれでもレベルは高く、やや苦労していました。まあディスカッションの時間が無い分、自分の考えをまとめるのに時間を割くことができるので、楽ではありますが。
〈Part.1-E〉そしてWUDCへ
WUDCに向けてある程度の練習を積むことはできましたが、英語OA・ディスカッションには十分には自信が持てておらず、実戦の回数を増やすべきだった気はしています。
また、ディスカッションについても、日本国内だとどうしても知り合いの方が多く、気が緩んでしまいがちですが、海外大会だとそうはいかないので、ジャッジディスカッションに慣れるという意味でも、実戦を重ねておくべきだったと今となっては思います。結局WUDCで一番苦労した部分なので…
ということでPart.1は以上です!
Part.2ではWUDCの各試合の詳細な振り返りと反省をお届けする予定です~(モチベがあればPart.3でジャッジ以外のWUDCの感想を書くかもしれません)